不動産の個人売買を考えているんだけど、仲介業者を通さずに自分で契約書を作るのって大丈夫だろうか、後でトラブルにならないんだろうか、と思っていませんか。不動産の売買で最も重要な書類が契約書です。自分で契約書を作成する際には、法的な知識や不動産取引の専門知識が不可欠で、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
この記事では、不動産個人売買における契約書作成の注意点、盛り込むべき重要な項目、そして後々のトラブルを避けるためのポイントを分かりやすく解説していきます。
不動産個人売買とは、仲介との違い
この記事を読めば、仲介との違い、個人売買の利点と欠点が明確になります。それでは、不動産個人売買の基本から見ていきましょう。
不動産個人売買の基本的な意味
不動産個人売買とは、不動産業者を介さずに、売主と買主が直接取引を行うことです。親族間や知人間での売買、あるいはインターネットなどを通じて知り合った個人同士で行われることがあります。
不動産業者による仲介との違い
不動産業者の仲介では、業者が物件の紹介、条件交渉、契約手続き、引き渡しなど、売買に関わる一連の業務をサポートします。一方、個人売買では、これらの業務をすべて売主と買主自身が行う必要があります。仲介業者がいないので仲介手数料がかからないのが大きな違いです。
個人売買の利点
個人売買の主な利点は、仲介手数料の支払いがないことです。物件価格によっては、数十万円から数百万円の費用を節約できます。また、当事者同士が直接交渉するため、細かな条件や要望を伝えやすいという利点もあります。
個人売買の欠点
個人売買の欠点としては、法的な手続きや契約書の作成などを自分で行う必要があるため、専門知識が求められる点が挙げられます。売主の場合は、買主を探したり、物件の情報を開示したりするのも自分で行う必要があり、手間と時間がかかります。さらに、当事者間で直接交渉するため、感情的な対立が生じやすいという側面もあります。

不動産個人売買の流れと必要な手続き
個人売買って、手続きが複雑そうで不安ではありませんか。ご安心ください。順を追って、必要なステップと書類を解説します。 一つずつ、丁寧に見ていきましょう。
物件情報の収集と相手探し
個人売買を始めるには、売主であれば売却したい物件の情報を、買主であれば購入したい物件を探す必要があります。親族間や知人間での取引であれば、このステップは比較的容易です。しかし、不特定多数の相手と取引する場合は、インターネットの掲示板や個人売買のマッチングサイトなどを活用することになります。
条件交渉と合意
買主が見つかったら、物件の価格、引き渡し時期、支払い方法などの条件について交渉を行います。双方が納得できる条件で合意することが重要です。後々のトラブルを避けるためにも、口約束だけでなく、書面に残しておく必要があります。
売買契約の締結
合意した条件に基づいて、売買契約書を作成し、売主と買主が署名・捺印を行います。契約書には、物件の情報、売買代金、支払い方法、引き渡し時期、契約不適合責任(瑕疵担保責任)に関する事項などを明確に記載する必要があります。
物件の引き渡しと登記
売買代金の支払いと同時に、売主から買主へ物件が引き渡されます。同時に、法務局へ所有権移転登記の申請書類を提出します。これにより、物件の所有者が正式に買主に移ります。
各ステップで必要な書類
各手続き段階で、さまざまな書類が必要になります。例えば、登記手続きでは、登記申請書、売買契約書、住民票や本人確認書類などが必要になります。事前に必要な書類を確認し、準備しておきましょう。
個人売買で失敗しないための対策
個人売買で失敗しないために、よくある失敗例とその対策を解説し、安全な取引をするための知識を身につけましょう。
物件の調査をしっかり行う
個人売買では、買主自身が物件の状態をしっかりと調査する必要があります。建物の劣化具合、雨漏りの有無、地盤の状態などを確認しましょう。必要であれば、専門の業者にホームインスペクションを依頼することも検討しましょう。また、周辺環境や過去の事故歴なども確認しておくことが大切です。
※重要:売主へのヒアリングも含めて、売買物件で過去に人が死んだか(自殺、他殺、自然死)は必ず確認しましょう。プロの不動産業者なら必ず調査することです。
契約内容を隅々まで確認する
契約書は、売買に関する重要な約束事を定めたものです。不明な点や納得できない点があれば、必ず相手方に確認し、合意した内容が正確に記載されているかを確認しましょう。特に、契約不適合責任(瑕疵担保責任)に関する条項は、後々のトラブルを避けるために重要なポイントです。
第三者の専門家への相談を検討する
法的な手続きや契約書の作成に不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談すると安全です。専門家の知識を活用することで、安心して取引を進めることができます。しかし、専門家への相談は報酬を支払う必要があります。
売買後のトラブルに備える
万が一、売買後にトラブルが発生した場合に備えて、連絡先を交換しておく、やり取りの記録を残しておくなどの対策をしておきましょう。また、必要に応じて、弁護士などの専門家に相談できる体制を整えておくことも有効です。しかし、弁護士は無料で相談できません。

個人売買の契約書類作成のポイント
契約書は自分で作れるのか、重要事項説明とは何か、そんな疑問を解消し、スムーズな取引を目指しましょう。 契約の要点をしっかり押さえましょう。
契約書作成の注意点
売買契約書の記載すべき事項は、以下の通りです。
- 物件情報の正確な記載: 登記簿謄本をそのまま、所在、地番、家屋番号、面積などを正確に記載します。 売買代金と支払い方法: 金額、支払い時期、支払い方法(現金一括、分割など)を明確に記載します。 引き渡し時期と条件: いつ、どのような状態で物件を引き渡すかを具体的に記載します。
- 契約不適合責任(瑕疵担保責任): 物件に隠れた欠陥があった場合の責任範囲や期間を定めます。
- 手付金: 手付金の金額、支払い時期、解約手付としての性質などを記載します。
- 違約金: 契約不履行があった場合の違約金の金額や取り扱いを定めます。
- 公租公課の負担: 固定資産税や都市計画税などの負担をどうするか。
- 特約事項: その他、売主と買主の間で合意した特別な事項を記載します。
重要事項説明とは
重要事項説明は、宅地建物取引業法に基づき、不動産取引の際に宅地建物取引士が買主に対して行う義務のある説明です。個人売買では法律上の義務はありませんが、買主保護の観点から、売主が物件に関する重要な情報を買主に説明することが望ましいことです。義務はありませんので、売主の裁量になります。説明すべき主な事項は以下の通りです。
物件の登記に関する事項(権利関係など)、都市計画法、建築基準法などの法令に基づく制限、私道に関する負担、電気・ガス・水道などの設備の状況、建物の状況(構造、修繕履歴など)、代金の支払い方法などに関する事項、契約の解除に関する事項、損害賠償額の予定または違約金に関する事項。
契約不適合責任(瑕疵担保責任)について
契約不適合責任とは、引き渡された目的物に瑕疵(欠陥)などがあって契約の内容に適合しない場合に、買主が売主に対して追及できる責任のことです。例えば、雨漏りやシロアリ被害など、契約時に知ることができなかった隠れた欠陥があった場合、買主は売主に対して損害賠償を請求したり、契約を解除したりすることができます。
個人売買においては、この責任範囲や期間を契約書で明確に定めることが非常に重要です。
この責任については不動産仲介業者の仲介では期間を限定しています。売主は正直に現状を告知して、引き渡し後、一定期間が経過したら責任を負わない契約です。
個人売買で何も決めないで売買してしまうと民法の規定が適用されます。事実上、無期限で売主が責任を負うことになってしまいますので明確に定めましょう。
契約書のひな形と作成のコツ
インターネット上には、不動産個人売買の契約書のひな形が公開されています。これらを参考にしながら、取引の内容に合わせて修正していくと良いでしょう。作成する際は、専門用語を避け、誰にでも分かりやすい言葉で記載することを心がけましょう。また、不明な点があれば、自己判断せずに専門家に相談することが大切ですが、専門家は無料で相談できません。
重要事項説明書の作成ポイント
重要事項説明書を作成する際は、物件に関する正確な情報を漏れなく記載することが重要です。口頭での説明だけでなく、書面として残しておくことで、後々の言った言わないのトラブルを防ぐことができます。物件の状況を正直に伝え、買主が十分に理解した上で契約できるように努めましょう。
しかし、実際には売主が難しい書面を交付することはないでしょう。重要事項説明書ではなく「不動産の現状」を記載した書類なら容易に交付できます。例えば、雨漏りの有無や過去の修理の有無、などを列記した書面です。

個人売買にかかる税金と節税対策
個人売買は、どんな税金がかかるのか、疑問に思われるでしょう。実際には不動産仲介業者の仲介で売買する場合と税金は同じです。 再確認の意味で列記します。
- 不動産取得税(買主)不動産取得税は、不動産を取得した際にかかる税金です。税額は、固定資産税評価額に一定の税率を掛けて計算されます。軽減措置が適用される場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
- 登録免許税(買主)登録免許税は、不動産の所有権移転登記などを行う際にかかる税金です。実際には登記費用として認識される金額です。税額は、登記の種類や不動産の評価額によって異なります。
- 印紙税(売主・買主)印紙税は、不動産の売買契約書などの課税文書に貼付する印紙の税金です。契約金額に応じて税額が異なります。
- 譲渡所得税(売主)譲渡所得税は、不動産の売主に利益が出た場合にかかる税金です。取得費や譲渡費用などを差し引いた金額に、所有期間に応じた税率が課税されます。
不動産個人売買に関するQ&A
よくある疑問とその回答をまとめました。あなたの疑問もきっと解決します。
Q: 個人売買でも住宅ローンは利用できますか?
A: 一般的に利用可能です。しかし、金融機関によっては、重要事項説明書や売買契約書が不動産業者の作成したものでなければ受け付けないことがあります。個人売買の場合の審査基準が異なる場合がありますので、個別に金融機関に確認が必要です。
Q: 契約書は自分で作成しても大丈夫ですか?
A: 法的には問題ありませんが、不備があると後々トラブルの原因になる可能性があります。ひな型を使って標準的な内容の売買にすることを考えましょう。
Q: 個人売買でトラブルが起きた場合、どこに相談すれば良いですか?
A: まずは当事者間で話し合いをすることが基本ですが、解決が難しい場合は、弁護士などの専門家、または地域の消費生活センターなどに相談することを検討してください。
Q: 個人売買の仲介手数料は無料ですか?
A: はい、個人売買では不動産業者が仲介しないため、仲介手数料は発生しません。
Q: 個人売買をする際に気をつけることは何ですか?
A: 売買の相手方が信頼できると思えることです。事前に条件を交渉してトラブルにならないような書面を作成することです。口頭の約束は意味がありません。
まとめ:個人売買は不安があればやめるべき
不動産売買のトラブルは、引き渡し後に起こります。不動産仲介業者の仲介売買でもトラブルが発生する確率は同じかもしれません。しかし、不動産仲介業者の仲介であればトラブルを解決するために仲介業者が働いてくれます。
個人売買と不動産業者仲介売買の違いは「仲介業者が働いてくれる」ことです。
ある程度の売買の知識と覚悟があるならば、個人売買は難しくありません。売買の相手方が合意したことを書面にすることに協力的なら良い売買ができることでしょう。
単に仲介手数料を節約したいという理由ならば個人売買はお勧めしません。